callboxでは11月3日(金)より、速水一樹さんによる展示「bomb and roll」を開催いたします。
以下、速水さんが展示に寄せたテキストとなります。
「bomb and roll」は都内各地で展開しているシリーズである。450×900mmの合板を整数比で分割し、塗装したカラフルな部材のセットを専用の台車に収納して、それを転がしながら街中を歩き回る。歩きながら見つけた都市空間の隙間(建物と建物の間や細い路地など)に部材を即興で組み上げる。作品のルールは以下の通りである。
①台車に収められている部材は全て使うこと
②1つの部材は必ず1つ以上の他の部材と接しつつ、建築物や地面と接すること
③部材同士はその断面同士、もしくは断面と表面で接すること
④接着剤やビスなどは一切使わず、重力と摩擦力のみを利用して組み上げること
⑤形作る構造物は1つのまとまりであること
⑥組み上げ→撮影→撤去までを20分以内で行うこと
組み上げられた部材の組み合わせ=構造物は、展開される場所の形状に依存する形となり、展開する場所が変わればその場所に応じて変容する。
一時的に空間を占拠する行為でもあるこの作品を成立させるためには、人通りの比較的少ない場所、建物の密集する場所や細い路地などが適しているため、大通りから逸れた路地を選んで歩くようになる。そして、建物と建物の隙間や自動販売機の脇、電信柱と塀の間など、作品を組み上げるのにふさわしい場所を探して歩き回る。部材を収めた台車を持ち歩くことで、普段とは異なる視点を持って街を歩くことができる。これはスケーターやグラフィティのライターの視点、もっと言えば、犬の散歩や赤ちゃんを乗せたベビーカーを押して歩くこととも近いと思う。作品を飼い慣らし、時には作品に翻弄されながら街を歩き回る。
Callboxのある百人町は、徳川幕府の鉄砲隊「百人隊」がかつて住んでいた場所で、町名の由来にもなっている。南北に長い短冊状の区画は、百人隊が住む長屋がひしめいていた名残で、大久保通りから脇道に入ると、200~300m進まなければ別の道と交差しないような道がまっすぐ伸びており、中には行き止まりの道もある。それらの路地も意外と人通りが多いのだ。こうした路地を歩くことで、住宅街、商店街、多国籍街、かつてのドヤ街、専門学校が集まる学生街という側面など、この小さな街が持つ様々な顔を垣間見ることができる。私の作品はそうした街の時事的な風景を直接的に伝える意図がもともとあるわけではないのだが、いつ消えてしまうかわからない、誰も気に留めないような街の風景が、結果として作品の中に断片的に映り込むことは、今、この街で作品を制作することの一つの意義になっているのではないかと思う。
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bomb and roll
速水一樹
期間 : 2023年11月3日(金)〜11月12日(日)
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写真:Tomoko Rikimaru